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野沢和弘コラム

[ プロフィール ]
野沢和弘/社会福祉法人 千楽 副理事長 静岡県熱海市出身。1983年早稲田大学法学部卒業、毎日新聞入社。いじめ、ひきこもり、児童虐待、障害者虐待などを報道する。論説委員(社会保障担当)を11年間務め、2019年10月退社。現在は植草学園大学副学長・教授、一般社団法人スローコミュニケーション代表、東京大学「障害者のリアルに迫るゼミ」主任講師、社会保障審議会障害者部会委員、障害者政策委員会委員なども務める。
重度の知的障害(自閉症)の子がいる。浦安市に住んでいる。
主な著書に「スローコミュニケーション~わかりやすい文章、わかちあう文化」(スローコミュニケーション出版)、「なんとなくは、生きられない。」「障害者のリアル×東大生のリアル」「条例のある街」(ぶどう社)、「あの夜、君が泣いたわけ」「殺さないで~児童虐待という犯罪」(中央法規)、「わかりやすさの本質」(NHK出版)、「福祉を食う~虐待される障害者たち」(毎日新聞社)「なぜ人は虐待するのか」(Sプランニング)など。
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ご利用者さまへの権利侵害案件について

2022年6月14

関係者各位

社会福祉法人千楽

理事長 岸田宏司

 

 平素より大変お世話になっております。社会福祉法人千楽理事長の岸田でございます。先般、弊社におきまして虐待を疑われる不適切な案件がございましたので、その対応についてご報告いたします。

 

2022年4月30日、利用者さまのご家族から日中一時支援事業リトルブレイバーのA職員より顔をたたかれたとの連絡をいただきました。当法人の虐待防止委員会担当者らが調査を始めたところ、翌51日に別の利用者さまのご家族から「腕に複数の歯形が付いている」との連絡を受けました。この方は430日にリトルブレイバーを利用しており、A職員が担当として付き添っていたため、弊社の虐待防止委員会では本件も併せて聞き取り調査を行いました。

 同委員会の調査に対し、A職員は最初の事案について、「(トイレを清掃していた時に)意図的ではないが肘が顔に当たった可能性はある」と回答し、次の事案については、「強い力で抱き着かれたため(もみあっているうちに)結果的に歯形が付いてしまったかもしれない」などと話しました。

 A職員の証言と一部符合する場面が防犯カメラの録画で確認されたことなどから、同委員会では虐待が疑われる行為があったと判断するに至りました。

 

 両利用者さまとご家族に経過の説明と謝罪を行い、浦安市にも報告し、浦安市障がい事業課による現地調査も入りました。A職員は法人の処分として出勤停止とし、531日付けで自主退職いたしました。

 今回の事案につきましては、A職員の個人的な問題として済ますのではなく、法人として職員採用や育成、施設内の環境や支援のあり方に問題がなかったかを詳しく検証し、再発防止に向けて全力を挙げて取り組む所存です。みなさまにご心配、ご迷惑をかけたことをお詫び申し上げます。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

 

■虐待・権利侵害に関する当法人の考え方

 全国の障害者支援の現場では年間3,000件近くの虐待が認定されています。障害者虐待防止法(2011年施行)で小さな権利侵害やグレーゾーンと思われる行為も市町村の虐待防止センターへ通報することが義務付けられたことによるものです。

 言葉で自らの思いを表現することが難しい重度障がい者のいる現場では、以前から虐待や権利侵害が横行しているとの指摘がありました。自傷や他害、パニック、多動などの行動に対して力による抑制や隔離は今でも多くの施設で行われています。

 どんな専門資格のある職員でも、優れた実践をしている施設でも、権利侵害の芽は起こり得る、というのが国の考え方で、障害者虐待防止法の理念です。小さな芽に対して見て見ぬふりをすることがとんでもない虐待へとエスカレートさせることは数々の事件で明らかになっています。小さな芽のうちに表に出して、より良い支援の糧にすることを法は求めています。年間3,000件のうちの多くが早期の段階での虐待と考えられています。

 

 当法人では法の考え方に基づき、虐待や権利侵害が疑われる案件には法人を挙げて正面から取り組み、どのようなものでも必ず市に報告することにしています。

 人も建物も過密な都市環境や障がい者に慣れていない地域では、障がいのある方やご家族の生活は何かとご苦労が多いことと思います。行動障害や問題行動とされているものはご本人のせいではなく、環境や支援のあり方に問題があるというのが当法人の基本的な認識です。できるだけ利用者ご本人やご家族のニーズに沿った福祉を提供し、豊かな生活をサポートしていきたいと考えています。

 浦安市の地域特性もあって充分な広さの支援の場を確保するのが難しく、職員の採用や育成にもまだまだ課題は多くありますが、「どんな障がいがあっても住み慣れた街で」「その人らしく生きる、をあきらめない」という法人の理念の実現に向けて一層励んでいきますので、どうぞご理解ご指導をよろしくお願いします。

                         

社会福祉法人「千楽」虐待防止委員会

委員長 三澤朋洋(常務理事)

委員  近藤 良(理事)…メハル、マリン、ノオル担当

委員  横倉裕子…まある担当

委員  竹野 友…カイム担当

委員  今 葵 …リトルブレイバー担当

委員  福田真清…ミッテ担当

委員  和田千鶴子…ひきこもり相談担当